会社組織による不祥事が連日世間を騒がせています。最近起こった、或いは発覚した比較的大きな事件だけでも、ミートホープ社による偽装ミンチ事件、コムスンによる介護報酬の不正請求、ユニマット関連会社による都心での爆発事件など、事欠きません。

 この総てに共通している、日本独特の事情があります。
 それは、会社が組織として、掛けるべき経費の類をケチり、或いは不正に過大な請求をすることにより、「会社組織が」黒い利潤を得ようとする姿勢です。

 先に日本独自の事情と記述しましたが、しかし、この種の不正は世界中どこでも見られるものでしょう。
しかし、不祥事に占めるこの種の不正の割合は、先進国と呼ばれる国々の中では日本は群を抜いています。

 例えば、アメリカ産の牛肉に、何時まで経っても危険部位の混入が無くならないとか。これは、会社システムの問題ではなくて、末端の作業員の無知或いは手抜きに拠るところが大きい。ところが、日本の肉の偽装は、社長自らがゴミを高値で売りつけてぼろ儲けを企んだ結果です。
 宅急便システムなどでも、他国では、末端の配達員のモラルの低さから窃盗が起こるのに対して、日本の会社では、最初から無茶とも言える配達時間指定制度を導入し、労働基準法を始めとする各種法規に違反してでもドライバーに無茶をさせた挙句、そもそも会社の意思として配達事故は保証金を払えばいいと云う考え方が主流です。

 このような事態を引き起こしている原因に、成熟していない、或いは非常に日本独特な会社経営のシステムがあります。

 殆どの方が、日本は資本主義の国だと想っているでしょう。
しかしその実、原理的な資本主義の意味すら理解できていない人が多いように想います。しかもこれは、経済の専門家を自認する人ほど顕著な傾向にあるようです。

 中学生程度の社会科で、資本主義経済の基本については学ぶはずです。そこでは、会社組織について、このように説明されているはずです。曰く、「資本家が資本を、労働者が労働力を提供し合って利潤を求めて活動する法人格」であると。
これは、本来、資本主義における大原則である筈です。ところが日本では、この大原則が通用していない。

 上記した大原則を理解した時、会社とは誰のものであるのかは明白です。それは資本家と労働者のものであり、社長などと呼ばれる存在は、ただ単に会社経営の専門家として雇われた一社員に過ぎません。
過激な考え方だと想われるかもしれませんが、この考え方こそが正しいと云う証明にうってつけの人物が居ます。カルロス・ゴーンです。納得できましたか?

 ところが、大多数の日本の会社においては、社長が、あたかも会社を自分個人の所有物であるかのように認識しています。
だからよく聞くんですね、「オレの会社」などと云う世迷いごとを。
いくら100%個人出資で、株式の総てを個人で保有していたとしても、株式会社である以上、社員の会社でもあります。勿論、全社員と、100%オーナー社長ひとりとがようやく対等、と云う強大な力を持った状態ではありますけれど。
それを理解できないのなら、社長業などには相応しくない。出資だけしていればいい、経営に口を出す資格はありません。

 そして、日本の税体系が、会社には非常に甘いです。税率のことを問題にしているのではありません。必要経費の認定において、ほぼ会社の申告の言いなりで、結果として脱税天国を作り出しています。

 その結果、何が起こっているかと云えば、会社と云う法人内に利潤を溜め込むと云う現象です。それらは理由をつけて内部留保されていたり、裏金と云う形だったりします。
社長といえども収入は給料ですので、巨額の給料を貰っても巨額の税金を取られるだけです。しかし、儲けを会社にプールしたまま、必要経費と云う名の下に使い放題であれば、社長始め一部の経営陣は何のデメリットもなく贅沢三昧ができる訳です。
ほら、居るぢゃないですか。10年以上も税金を払っていないのに、ベンツを乗り回していたり、10年以上赤字の筈なのに、倒産もしないで贅沢な暮らしをしているヤツ。
特徴的なのは、そうやって黒い利潤を得ている会社は、社長個人は会社の経費で豪遊していても、社員の給料どころか必要最低限の社員を雇うことすらケチることですね。

 そう、日本においては、会社は脱税放題の社長個人の金庫であり、社長個人のモラルの低さが、トップダウンで冒頭に挙げたような醜聞を行なう訳ですよ。
これこそが、日本特有の会社不祥事が起こる仕組みです。

 さらに、このような会社経営の実態は、昨今目立ち始めた外資による日本企業の買収を呼び込みます。
…ここで言う「このような」とは、トップダウンによる不正体質ではなくて、会社と云う法人が利潤を溜め込む体質のことを指しています。
 なぜなら、本来、その決算期毎に清算され、株主と労働者に分配されている筈の利潤が、会社にプールされているのですよ。株式を取得して大株主になれば、少なくとも、その時点で溜め込まれていた利潤の半分を要求する正当な権利を得られます。この所謂内部留保と呼ばれる金額は、かなり巨額なものがあります。
記憶に新しいところでは、ブルドックソースを巡る争いなんか、典型的なこれですね。ファンド側は、最初から、「経営する気なんて全くない」と明言していました。
日本の企業の、社長の所有物的な感覚は、こういった新たな危機をも自ら招いているのです。

 繰り返しになりますが、会社組織を、社長が自分の所有物だと認識していることこそ、様々な不祥事を生む温床であり、しかも経済のグローバル化に伴い、外資による買収騒ぎを引き起こしている原因のひとつである。
 経営のプロフェッショナルであるのみならず、本来の経済を正しく理解しているものが、正しく雇われ社長に納まることが、会社にとっていちばんいいことなのでしょう。

…それにしても、現職文部科学大臣の、コムスン騒ぎの際の、「福祉なんて悪いことやらなきゃ儲かる訳がない」発言はおもしろ過ぎて忘れられないなぁ…

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