エクソダス発売以来、《ドルイドの誓い/Oath of Druids》は非常に強力な、アーキタイプであり続けました。日本選手権やAPACを支配したスタンダードのみならず、エクステンドでも、オースデックは殿堂入りプレイヤーであるボブ・メイヤーに拠ってプロツアー優勝デックとなっています。

 その対クリーチャーデックに対する強力なコントロール力は、それぞれのフォーマットでのクリーチャーデックをほぼ根絶させ、ついにはエクステンドでの禁止カード入り、そして当然のようにレガシー環境下でも禁止カードに指定されています。

 ところが、この超強力なエンチャントは、ヴィンテージ環境では制限されていません。4枚使えます。
しかし、長らく瞬速系コンボが主流であったヴィンテージ環境では、クリーチャーデックがメタ上に殆ど見られなかったことから、この《ドルイドの誓い/Oath of Druids》を使ったデックは殆ど存在しませんでした。2004年夏頃迄のことです。

 しかし、2004年秋、コンセプトに日本をフィーチャーしたセット、神河物語が発売されたことで、ヴィンテージのメタが大きく変わりました。
《ドルイドの誓い/Oath of Druids》を中核に据えたデックは、まず対戦相手がクリーチャーをコントロールしていない限り、只の低速コントロールに陥ると云う欠点を内包しており、そのことがそれまでヴィンテージでオースデックが存在しない理由でした。しかし、神河物語で1枚のランド、スタンダードでは殆ど使われなかった土地が、ヴィンテージのメタを激変させたのです。

 そのランドこそ、《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》です。

 好きな色マナをひとつ生み出せる代わりに、対戦相手のコントロール下に1/1のスピリット・トークンを1体与えてしまうこの土地は、通常でしたらデメリットになる部分が、オースデックを使う場合には強力なメリットとなります。

 2004年秋、いちばん最初に成功したオースデックは、よく調整はされていましたが、実にシンプルなものでした。カウンターオースの形態から、採用されているクリーチャーは《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》と《夜のスピリット/Spirit of the Night》の2体。それぞれ飛行と速攻を持っており、トランプルとパワー6と云う大きさ。オースを2ターン起動すると、合計18点のダメージを叩き込めます。フェッチランドなどで相手のライフが勝手に減っていることを期待すれば、それだけで勝てる計算になります。
1ターンめに、MOXと果樹園からオースを貼って、手札に《Forec of Will》を抱えていれば、ほぼ勝ちゲームです。ここでMOXではなくて、《Black Lotus》から青マナ3つ出して、《Time Walk》まで撃ってしまえば酷いものです。

 当然、すぐに対策が採られることになりました。基本かつ古典的な《剣を鍬に/Swords to Plowshares》をフル投入することから始まって、対象の攻撃クリーチャーをタップし、そのクリーチャーからのダメージを総て軽減するランド《Maze of Ith》の採用、対象のレジェンダリークリーチャーをオーナーの手札に戻させるランド《Karakas》の採用など。
特に《Karakas》の採用に至って、手札に戻ってしまった高コストのクリーチャーを簡単に場に出せなくなったオースデックの隆盛は、いったん収まります。今でも有力なアーキタイプのひとつではありますが、メタを支配するほどではありません。

 さて、この《ドルイドの誓い/Oath of Druids》を中核に据えながら、全く違うコンセプトで、ひとつのデックがデザインされました。
それが、WFCで圧倒的な勝率を誇る、エターナル・オースです。デックリストは、過日のブログをご参照ください。

 このデックの最大の特徴は、クリーチャーに、デック名にもなっている《永遠の証人/Etrnal Witness》を採用していることです。そして、結果としてそのことが、膨大なアドバンテージをもたらすことになるのです。
そもそも、オースデックと聞いて万人が考えるものと、その基本構成からして違います。デザイナーでもあるChickenatog氏が昨年GenConに遠征された際、通りがかりでそれを見ていたらしい人物がブログに、「スゲー愉快なデックを見たぜ!」みたいに書いていたのですが、彼が想像したデックは青緑2色のカウンタータイプでした。しかし、実際にはカウンターなど1枚も採用されていなのです。

 《ドルイドの誓い/Oath of Druids》を起動した際、当然その挙動として、採用されているクリーチャー、この場合は《永遠の証人/Etrnal Witness》が場に出た時、それより「上」にあったカードは総て墓地に置かれます。そして、《永遠の証人/Etrnal Witness》が場に出た場合、その充分に肥えた墓地の中から、好きなカードを手札に入れることができます。
つまり、このデックは最初の段階で、オースが起動する限り、毎ターンタダで《悪魔の教示者/Demonic Tutor》を撃っているようなものです。そして、その後、通常のドローステップが来ます。
毎ターン追加ドローができるカードでさえ強力なのに、ドローどころか毎ターンチューターしている訳ですよ。しかも、オースの数だけ。

 このデックの最終的な目的、勝利手段は、《Zuran Orb》と《素早い支配/Fastbond》《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》を場に揃え、無限マナ&無限ライフを確立してから、《生ける願い/Living Wish》で《ラースの果て/Rath’s Edge》を調達し、無色の無限ダメージを叩き込むことです。それぞれデックに入っている枚数は少なくても、オースを繰り返し起動しているうちに確実に手に入りますよね。

 そして、このデックを安定して勝てるデックにさせているギミックのひとつが、《時間移動/Time Walk》です。《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》を使って《時間移動/Time Walk》をプレイし、続く自分のターンに《ドルイドの誓い/Oath of Druids》を起動して《永遠の証人/Etrnal Witness》を場に出すと、再び《時間移動/Time Walk》が手札に戻ります。所謂、「ずっとオレのターン!」ですよw
勿論、その間通常ドローができているので、手札と土地でかなりのアドバンテージ差を取れる筈です。

 プレイングが結構難しいこのデックですが、いちばん簡単に使うには、まず《ドルイドの誓い/Oath of Druids》をなんとか2枚貼ることです。そこまで生きていれば、1枚目の起動で《時間移動/Time Walk》を、2枚目の起動でその他の必要パーツを回収することで確実に勝利条件へ近づくことができます。
勿論、これを鵜呑みにして、最初のオース起動でオースを回収していたら負けた、と云う状態も発生し得るので、何を回収するのか、その判断こそがこのデックを使いこなすキモだということは念頭に置いておいてください。
個人的には、2枚目のオース>《時間移動/Time Walk》>《ヴォルラスの要塞/Volrath’s Stronghold》>その他のパーツ、こういった優先順位で回収していきたいと想っています。

《永遠の証人/Etrnal Witness》を何らかの方法でライブラリに必ず存在する状態にできれば、無限ターンが発生します。その為に、このデックでは《ファイレクシアの塔/Phyrexian Tower》と《ヴォルラスの要塞/Volrath’s Stronghold》と云う2種類のランドも採用されています。前者は場にある証人を墓地に落として、後者は墓地にある証人をライブラリトップに戻します。また、証人を墓地に落とし、かつ相手の妨害手段を減らす為に、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》が採用されています。
重要なのは、《永遠の証人/Etrnal Witness》を4枚とも場に並べてしまい、次のターンのオース起動で何もできないと云う状態に陥らないことです。この状態に陥らない為に、場にある攻撃できる証人は総て攻撃に参加させるべきです。当然、対戦相手はこちらが与えたトークンをコントロールしているはずですが、主目的は証人を墓地に落とすことです。ブロックしてくれれば狙い通り。ブロックされなければ、クロックになります。
 古いヴァージョンでは、《頭蓋骨絞め/Skullclamp》が採用されていました。《時間移動/Time Walk》を使い回せる状況になれば、場の証人を墓地に落とした上で追加の手札まで齎してくれるこのカードは、アドバンテージの塊です。墓地に落ちた証人は、《ガイアの祝福/Gaea’s Blessing》に拠ってライブラリ内に戻され、無限ターンを齎してくれます。私はこちらのバージョンのほうが、使い易くて好きですね。

 現在のヴィンテージ環境では、殆どの場合メインから、少なくともサイド戦からは厳しい墓地対策が採られるはずです。ヴィンテージの多くの有力デックは、墓地をリソースとして利用していますから。
この場合、純粋にオースで《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》を場に出して、高速で殴り勝つ戦略に切り替えることで、対戦相手のサイドボード戦略を全く無効にすることができます。解かっていても、この両方に同時に対策を採ることは難しいと想われます。不可能ではありませんが、あまりこのデックだけをガンメタし過ぎると、他のデックに勝てなくなるでしょう。

 あらゆるギミックが、タイムアドバンテージと質の高いハンドアドバンテージを得られるようにシナジーされており、瞬殺では無いものの、いちど型に嵌めてしまえば相手にターンを渡さずにコンボの完成まで持っていけるシステムを内包している。
それが、このエターナル・オースと云うデックなのです。

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